汎用AIと専門AIを使い分ける
川崎重工が目指す誰もが恩恵を受けるAI活用のかたち
川崎重工業株式会社

汎用AIと専門AIを使い分ける
川崎重工が目指す誰もが恩恵を受けるAI活用のかたち
- 導入内容
- 規程のAI検索ポータル『ReguNavi』の核となる検索機能において、アイアクトのAI検索「Cogmo」を採用。
知りたい内容を質問するだけでAIによる的確な回答が得られることで、膨大な規程を探す時間を削減、本来の業務に集中できるように。 - ご利用サービス
- Cogmo Search、 Cogmo Enterprise 生成AI
重工メーカーとして、エネルギー・環境・防衛・海洋分野をはじめ、社会の現在と未来を支える川崎重工 エネルギーソリューション&マリンカンパニー。神戸工場の敷地内には潜水艦のドックがあり、防衛・インフラ分野を担う重工メーカーならではの光景が広がる。社会インフラや安全保障を支える企業として、同社は生成AIをどのように活用しているのか。 AIを活用した業務改善に挑む企業の実情に迫る。
ご担当者様
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川崎重工業株式会社
エネルギーソリューション&マリンカンパニー
企画本部 QM企画部 部長
北門 崇之氏
規程活用の課題 ──膨大な情報をどう業務に活かすか
日本三大重工メーカーの一角を成し、グループ4万人を抱える川崎重工。その中でも最大のカンパニーであるエネルギーソリューション&マリンカンパニーでは、「エネルギー」「水素」「船舶・防衛」を主軸とした多種多様な製品※1の開発・設計・製造・保守を行っており、製品群に応じて5つのディビジョンに分かれている。
| 分野 | 主な製品 |
|---|---|
| エネルギー | エネルギープラント、ガスタービン、ガスエンジン、蒸気タービン、ボイラ、コージェネレーション設備、CO₂回収システム、遠心圧縮機 |
| プラント・環境 | LNGタンク、化学プラント、産業プラント、ごみ焼却施設、環境プラント |
| 水素・CN | 液化水素タンク、水素基地、水素液化設備 |
| 船舶・海洋 | LNG運搬船、LPG運搬船、液化水素運搬船、大型タンカー(VLCC)、コンテナ船、潜水艦、自律型無人潜水機(AUV) |
| 舶用推進システム | CPP(可変ピッチプロペラ)、スラスタ、舶用ガスエンジン、舶用ディーゼルエンジン、減速装置、操船・制御システム、電気推進システム |
※1:川崎重工 エネルギーソリューション&マリンカンパニーの主要製品分類表
北門氏の部門は、これまで品質保証体制の改革に深く携わってきた。従来、ディビジョンごとに設けられていた品質保証部は2018年以降、段階的に統合が進められ、2021年には5ディビジョンすべてが統合された「品質保証本部」となった。長年にわたり蓄積されてきた各ディビジョンの品質保証に関する知見を組み合わせることでシナジーを創出し、現在も継続して仕組み改革に取り組み、数えきれないほどの業務改善を重ねている。
防衛関連の船舶や、エネルギーなどのインフラ設備の製造を行う同社にとって、品質関係の規程の存在は非常に大きいものだと北門氏は語る。
「DR(設計審査)規程に基づく設計審査は非常に厳格で、全体審議会は全6ステージあり各審議会を通過しなければ、次の製造ステージに進むことができません。各工程において規程の遵守を徹底し、不適合を最小限に抑えることが、会社の利益向上および信頼性向上に直結します」
一般的な企業と比べても規程の位置づけは非常に重い。新製品開発、設計審査、プロジェクト管理の規程などがあり、人事規程や経理規程といったバックオフィスに関する規程だけがある企業とは大きく異なる。細則を含まない各ディビジョンの規程に限っても、合計約3,000ページにものぼる膨大な規程が存在するために、その時必要な規程の記載箇所に自力で到達するのは、経験の浅い社員にとっては容易ではないという。
「どの内容がどの規程のどの箇所に記載されているのか、その全体像を把握するには一定の知識や経験が必要であり、必要な情報に迅速にたどり着くことは容易ではありませんでした。
過去には情報を探すことに多大な時間を要し、時には見落とされるケースもありました。どんなに良い業務プロセスを構築しても、その手順を守れなければ意味がありません。そうした状況を打開すべく、カンパニー共通で使える規程のAI検索ポータルとして開発・導入したのが『ReguNavi』です」
規程のAI検索ポータル『ReguNavi』の核となる検索機能において、アイアクトのAI検索「Cogmo」が採用された。もともと規程ファイルを管理していたSharePointの情報ポータルの検索を、CogmoのAI検索に置き換えた形だ。ここで重要なのは、同社がCopilotを導入していながらCogmoを選んだ、という単純な対比ではない。用途に応じて汎用AIと専門AIを使い分けるという考え方である。
汎用AIで広がる、現場起点の業務効率化
まずは、全社的に利用されているCopilotなど、汎用AIの利用・普及の状況について伺った。
「部門ごとにレベル感の違いはありますが、私が所属していた品質保証本部では積極的にAI活用した品質DXを推進しています。例えば、Copilotで独自のAIエージェントを作成し、業務を効率化しています。
格納したファイルに対する分析・評価・抜け漏れチェックを行ったり、ファイルの自動生成を行ったり、自動プロセスに組み込んだり、先進的な活用をしています。その他、多くの社員が個人的にプレゼン資料作成などにAIを活用しています」
カンパニー共通の情報基盤には、専門AIが必要だった
同社では、CopilotとCogmoを競合するAIとは捉えていない。
むしろ、目的や利用場面に応じて最適なAIを選択するという考え方を重視している。個人・チーム・部門の業務効率化には汎用AIであるCopilot、カンパニー全員が共通して参照する規程検索には専門AIであるCogmoという役割分担だ。
「AIが出す回答については、検索者の意図をくみ取った形で回答を出せないと意味がないと考えています。CogmoはPoCの時点で既に精度が高く、質問者の意図をくみ取って具体的に簡潔に答えてくれるため、『これは使える』と直感的に感じました。この回答精度は他のAIではまだ見たことないですね」と北門氏。

Cogmoを採用したもう一つの理由は、機能がシンプルであるからこそ、誰もがAIの恩恵を受けられるという点だ。Copilotは自由度が高く、スキルがあれば非常に便利に使いこなすことができる。一方で、個人のスキルに依存しやすく、「使える人しか使わない」傾向になりやすい。その点、Cogmoはシンプルな検索画面型インターフェースであり、ユーザーはプロンプトを意識することなく、質問を行う感覚で検索や回答を得ることができる。
そのため、カンパニー全員が利用する共通ポータルとの親和性が高く、誰もが同じレベルでAIの価値を享受できる。個人・チーム・部門での作業効率化にはCopilot、カンパニー統一の情報流通にはCogmo。こうした使い分けが、同社のAI活用の特徴となっている。
このような経緯で、規程のAI検索ポータル『ReguNavi』の検索機能としてCogmoを採用し、2025年3月の公開から約1年間、運用を続けている。
「キーワードの断片からでも探している規程にすぐにたどり着けるようになり、公開当初から非常に好評です。規程を探す時間を削減でき、社員が本来の業務により集中できるようになりました。
月間平均約4,000アクセス、ピーク時には7,000アクセスを超える利用があり、継続的に活用されています。AI回答の精度については、公開当初のような驚きは減ってきていますが、当たり前のものとして浸透してきた結果としてポジティブにとらえています」
また、同一形態で、過去の不具合情報を迅速にAI検索できる『不具合Navi』も開発のうえ、既に運用開始している。
AI普及の壁を乗り越える ──全社展開への挑戦
ただ、ここまでAIの普及を進めるのも、一筋縄ではいかなかったという。AIの導入・活用においてボトルネックとなったのは、やはりセキュリティ面であった。Cogmoの導入時にも、社内のセキュリティ申請の承認に長期間を要した。そんななか、ここまでAIを社内に普及させ、業務改善を実現してきた北門氏だが、AI普及のためにどんな工夫をされてきたのだろうか。
「大企業ならではの厳重なセキュリティ審査プロセスと、スピード感のあるAI技術活用との両立には常に難しさを感じています。しかし、とにかくAIの実用性と有用性を社内のあらゆる場面で発信し、粘り強く理解と共感の輪を広げてきました。全社会議でのプレゼン、幹部朝会での周知、社内記事の執筆、AI説明会の開催など、さまざまな機会を通じて啓蒙活動を続けています」
汎用AIと専門AIの共創 ──今後の展望
『ReguNavi』の成功を受けて、北門氏の元には他カンパニーからも相談が入り、現在、同社内の他カンパニー・他部門へCogmoの導入が広がっている。他カンパニーの規程のAI検索ポータル、他部門の不具合情報のAI検索ポータルと、様々な情報検索にCogmoが変革をもたらした。
「目的ごとのポータルにおいて、各内容に適したAI検索と生成AI回答を誰にでも提供できる」ことで、Cogmoは多くの業務改善を実現している。
最後に、北門氏へ今後のCogmoへの要望や、AI活用全般に関する期待について伺った。
「プラグイン機能を持たせて、Cogmoをポータル内の掲示板などに簡単にAI検索窓として埋め込めるようになると、より迅速で便利な使い方ができるようになると考えています。また、Cogmoとは異なる役割を担う専門AIとして、質問に答えることで不適合の真因分析ができるAIの登場に期待しています。現在もそういった機能を謳うAIはありますが、試用したところ、ヒューマンファクターや管理的要因の分析はまだまだできないというのが実状でした。AIの進化は非常に速いので、今後の期待は大きいですね」
川崎重工が推進しているのは、ひとつのAIですべてを解決する世界ではない。Copilotのような汎用AIによる生産性向上に加え、業務目的に応じた最適な専門AIを活用し、それぞれの強みを最大限に引き出すことである。なかでもCogmoが担うのは、組織内に分散する知識やノウハウを誰もが活用できる環境づくりだ。これまで一部のベテラン社員や特定部門に蓄積されていた知見を、必要な人が必要なタイミングで迅速に活用できるようにする。そうした「組織知の民主化」こそが、同社が描くAI活用の本質である。
カンパニーの業務改善の旗振り役として、AI活用を推進してきた北門氏。
今後もさらなる機能拡張やサービス向上を通じて、川崎重工様のAI活用を支援していく。

川崎重工業株式会社 公式Webサイト
https://www.khi.co.jp/



