3万ページの検索をAIに変えてWebサイトの離脱率が減少
200万件の問い合わせを減らすため、AI検索が果たした役割
神戸市役所
3万ページの検索をAIに変えてWebサイトの離脱率が減少
200万件の問い合わせを減らすため、AI検索が果たした役割
- 導入内容
- 「神戸市サイト」「神戸市FAQサイト」「神戸市水道局サイト」「神戸市広報紙サイト」の4サイト合計3万ページ以上を横断でAI検索。ひとつの検索画面で複数サイトの検索結果を提示し、どのサイトからでも最適な情報へのアクセス向上を実現。
- ご利用サービス
- ・Cogmo Search
行政課題の解決においてテクノロジーを活用した先進的な取り組みを続ける神戸市役所様。市民からの増え続ける問い合わせを減らすために市民向けFAQサイトの再構築に乗り出されました。その際、サイト内検索として選ばれたのが『Cogmo Search』。FAQサイトだけではなく複数の神戸市運営サイトの横断検索も実現。そこで得られた効果をお伺いしました。
ご担当者様
-
神戸市
市長室 広報戦略部
ホームページ監理官
金田 侑士さま -
神戸市
市長室 広報戦略部
担当係長
東 伸也さま -
神戸市
市長室 広報戦略部
吉村 幸保さま
市民からの問い合わせ減=自己解決を支援するための
FAQサイト再構築
六甲山系の豊かな自然と、洗練された港の風情、そして異国情緒あふれる街並みを特徴とする神戸市は、国際貿易港を中心に発展してきた、ご存知の通りの日本を代表する大都市です。そして、これからも日本の文化・経済をけん引する街であり続けるために、神戸市役所様は行政の効率化やイノベーションを図る自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進においても他都市をリードする取り組みを続けていらっしゃいます。
取り組みの一環として、今回、デジタル変革のターゲットとなったのが、市民からの問い合わせ対応業務です。神戸市のコールセンターが受ける電話件数は1日に約1,000~1,500件。代表電話にかかってくるものを含めると、なんと年間200万件に上ります。電話以外にも問い合わせチャネルとしては複数あるものの、98%が電話とのこと。「止まらない人口減少への対応が急務となる中、市民からの問い合わせ件数は一向に減らない、どころかむしろ増えており、ここに対する武器はDXしかなかった」と、ただのサイトリニューアルではなくDXとして実施して行きたい思いが神戸市役所様にはありました。
問い合わせ内容は税金からゴミの分別、コロナ感染時の対応まで多岐にわたるもの、FAQサイトを見れば自己解決できる問題も少なくありません。しかし、神戸市のサイトとFAQサイトが別々に存在しており、そもそも必要な情報が探しにくい上に、FAQサイトは表示まで数秒と検索スピードが遅い、欲しい情報が表示されない、など検索精度が低いという問題がありました。
それをDXとして改善するため選択いただいたツールのひとつが、AI検索『Cogmo Search(コグモ・サーチ)』でした。
サイト内検索にAIを活用すると離脱率が減り、
きちんと情報を提供できるようになった
FAQサイト再構築での課題は、FAQサイトしか検索ができないということでした。
「神戸市サイトのほうではGoogleの検索を使っていました。検索は出来ても、検索結果を改善するイメージは持っておらず、運用はしていませんでした」。これまで、課題は特にないと思われていた神戸市役所様でしたが、リニューアルを機にサイトの機能とあり方を再考、「検索はもっと使われるべきで、情報を横断検索もさせるべき」と検索機能を重要視するご判断をされました。「Webサイトの階層構造を整備して、市民にとってわかりやすいサイトにする方法もありますが、3万ページにも及ぶWebサイトを整理するのは時間と労力がかかります。その全てを継続管理していく負荷も考えると、解決への一番の近道は"検索の改善"という結論に至りました」と。
たしかに、大規模サイトのリニューアルは、予算も工期もかかり、かつ、膨大な情報を整理するだけでも大変な困難が伴います。中には、情報整理の途中段階でプロジェクトが頓挫することもあります。情報やサイト構造をそのままに、AIによって良い検索結果を提示することで、検索から欲しい情報にたどり着く頻度を上げたい、というお考えに応えたのが、『Cogmo Search』でした。IBM Watson®のAIドキュメント検索を利用した検索エンジンCogmo Searchで、FAQ記事の中からAIによって最適な記事の検索を可能とする仕組みです。加えて、Cogmo SearchはFAQ以外のサイトコンテンツも横断してAI検索することができます。
実際には、今回再構築した「神戸市FAQサイト」の他、「神戸市サイト」「神戸市水道局サイト」「神戸市広報紙サイト」の4サイトの情報、3万ページをインデックス。FAQサイト側から検索すると、FAQコンテンツも神戸市サイトの情報も表示。逆に神戸市サイト側からで検索しても、FAQサイトを検索できるようにしています。
例えば「コロナ ワクチン」で検索すれば、神戸市サイトにあるワクチン接種の概要を伝えるページと、該当するFAQのページが同じ検索画面に出てきます。両方の情報を見ることで、市民の方は概要や細かな注意点を確認できるようになりました。また、「コロナ ワクチン」という単語の検索だけではなく、「自宅療養者ですが、相談窓口を教えてください」など、文章でもきちんと検索結果を返すことができます。検索する単語が思いつかない方もお困りごとをそのまま入力すれば検索できるのも、AI検索の大きな効果でした。
「検索結果ページが充実した実感が出てきたころ、Google Analyticsで分析してみると、検索が利用された後のサイト離脱率が減少していた」とのこと。ナビゲーションやメニューの改善、サイト構造の改善、そもそものコンテンツの改善を行うことなくサイト離脱率が減少していたのは、長年、Web制作にたずさわる私たちとしても驚きでした。AIを活用したDXを選択したことで、良いスタートを切られたようです。
コロナ禍もありWebでの情報収集が増えるも、コールセンターで対応できていない電話はまだ14%。それをより減少させるためWebサイト・FAQサイトでの自己解決を目的として導入したAI検索で検索後の離脱率は7.8%減り、かつ、FAQサイトなど再構築で関連情報を見るなどの検索深度も23%増える結果が4ヵ月で出始めている。
こんなに良い検索なのだから、もっとスピードがほしい
AI検索を導入してデメリットや困ったことはなかったですか?という質問には、「導入当初、運用については不安がありました」とのこと。「AI」ということで、検索結果を良くする学習が大変なのではないかと思われていたそうです。
今回、アイアクトがご支援したのは、AI検索の仕組みと学習作業の解説をオンラインで40分行ったのみ。その後は神戸市役所様で、特に、コロナ関連のワクチンや給付金についてや、バスの時刻表・ルートについての検索の学習を行っていらっしゃいました。「最初は不安でしたが、作業にも慣れて、80個ほどの学習設定で、いきなりスルスルと精度が上がり、思い通りの検索結果が出せるようになりました」とのこと。毎週、数個の学習改善を追加する運用を、2ヵ月強。少しの改善を何回か続けたことで得られた成果に驚きと安堵があったようです。「期間限定などでピンポイントに検索結果に出したいものは、AIのスコアリングを利用しない別の優先順位設定もでき良かった」。膨大な学習が必要なく、既存の検索ツールのように大量のキーワード設定も不要、AIの運用は思いのほか負担ではなかったようです。
「ただ、検索スピードはもう少し速いといいですね。チューニングで速くしていただきましたが」。以前のFAQサイト検索よりは速くなったCogmo Searchですが、単純な検索システムではないため、Googleの検索より若干検索スピードが遅いことに改善要望もいただきました。「但し、横断で検索できること、検索結果の精度が高いこと、この先も成長できるシステムであることで、十分、プラスの変革になっています」という嬉しいお言葉もいただきました。
今後は電話のみのコールセンターから
複数チャネルのコンタクトセンター化をはかっていく
今回のリニューアルによって、市民の方が欲しい情報を得やすくなったものの、今後は情報を更新する市の職員にとっていかに使いやすい環境を実現できるかがひとつの焦点となっています。「市民の声を受けて記事を更新できる環境も整え、管理は担当部門に任せていますが、まだまだ使われていない印象です」。その理由は「地方公共団体を相互に接続する行政専用ネットワーク(LGWAN)がインターネットと遮断されており、管理画面に入るにはインターネットに接続する手続きが必要です。そこに時間がかかってしまい、思うように活用が進みません。この壁をクリアできないと今後の展開が難しくなると考えています」と。これは市だけではなく、企業の協力を得ながらベストな解決策を模索し始めているそうです。
また、コールセンター機能のWeb化を見据え、複数チャネルをまたいだ問い合わせ管理の一元化や、チャット機能の搭載、チャット内での検索や有人チャット機能の活用などにも関心を持たれています。新たな対応体制の構築を目指して計画が進行中、「コールセンターをもっと変革していきたいですね」。
行政に潜む課題をテクノロジーで解決する「GovTech(ガブテック)」先進都市としても知られ、スタートアップとの取り組みも盛んな神戸市。神戸市役所様が目指される進化を引き続きご支援していきたいと思います。
神戸市役所様のFAQサイト再構築には、『Zendesk(ゼンデスク)』を利用しています。株式会社アイアクトのAIファイル検索・文書検索『Cogmo Search(コグモ・サーチ)』はZendeskで作成したサイトを検索することができます。また、AIチャットボット『Cogmo Attend(コグモ・アテンド)』もZendeskの有人チャット機能と連携することもできます。
CogmoシリーズとZendeskの連携について
https://cogmo.iact.co.jp/news/cogmo_zendesk